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銀魂
A
「流石に観覧車の尾行は無理だろ」
土方は口許に手を当てたまま呟いた。

「そうだね。銀さんたちが乗ってる前後のゴンドラに乗れても、向こうのゴンドラの中は見えないし…」
同じく口許を覆った新八が同意する。

「大丈夫!なんとかなるネ。大切なのは尾行を続けようとする意思ヨ」
「…ただテメェが観覧車に乗りたいだけだろ」
土方の呟きに、神楽はビクリと反応した。

「ち、違うネ!勘違いアル!!」
両手を顔の前で交差して全力で首を横に振る。

「…まあ、滅多にない機会だしね。乗りたいなら乗ろうか」
新八がのそりと立ち上がり、観覧車の列を見た。
「さ、並びに行こうよ」

神楽は瞳を輝かせ、力一杯頷いた。
「うん!」


###

「沖田くん」
「何ですかィ?」
銀時は段々と離れていく地上を見下ろしながら、向かい側に座る青年に声をかけた。

「今日、楽しかった?」
「はい。とっても楽しかったでさァ」
満面の笑みを見せた沖田に、銀時も笑顔を見せる。
「そりゃ、よかった」

訪れる穏やかな沈黙。
各々が各々の側の窓から景色を眺める。
この遊園地の目玉でもある大観覧車からの景色は絶景だった。

「旦那」
「ん?」
呼び掛けに振り返れば、寂しそうな目をした沖田。

「俺、明日から出張なんです」
沖田の言葉に小さく頷き、口を開く。
「…そうなんだ。頑張ってね」

「だから」
沖田は爽やかな笑顔で再び口を開いた。
「無事に帰ってこれるようにおまじないのチューしてくだせェ」
「なッ!?」

真っ赤になって口をぽかんと開けているその姿は、どこか中2の夏休みの男子を思わせた。
「いっつも俺からじゃねェですか。たまには旦那からもしてくださいよ」
言いながら立ち上がると、沖田は銀時のとなりに腰を下ろす。

ガクリと傾くゴンドラ。
「おま…ッ。危ないからやめろ…!」
「旦那がキスしてくれるまで離れません」

しがみついて離れない沖田を、必死に引き剥がそうとする銀時。
不安定な車体はひっきりなしに揺れている。
「…わかった。わかったよ」

銀時の言葉にピタリと静止した沖田の肩を掴むと一度小さな溜め息を吐いた。
そしてゆっくり自らの唇を相手の唇へ押し付けた。
幾度も角度を変えて口付ける。

「どうだ。満足だろ?」
暫くして身体を離し、沖田の顔を見ると今度は沖田が顔を赤くして固まっていた。

「旦那ァ…」
「今度は何だよ」
「その…大好き、でさァ」
沖田は赤い顔を隠すように下を向き、仔猫のように銀時に擦り寄った。

###


「結構、見えるもんですね。向こうの車内」
新八と神楽は椅子の上に這いつくばり、窓から先を進むゴンドラの中を覗く。

「そりゃ、よかったな」
土方は『お煙草はご遠慮ください』と書かれた張り紙を無視して、懐からライターと煙草を取り出した。

「サドが笑顔で何か喋ってるアル。銀ちゃんの表情が見えないのが駄目ネ」
「あ、沖田さんが立ち上がりましたよ」
煙草を一本取り出し、火を点ける。

「あー!銀ちゃんに抱きつきやがったネ!!」
「何か雰囲気怪しいですよ」
「そうかそうか」
土方は子供2人の話を聞き流し、灰を携帯灰皿に落としながら景色を眺めた。

「お前らも折角なんだから景色くらい見とけって」
必死に銀時と沖田の様子を観察する2人に呆れた声を漏らす。

「煩いです」
「ほっとくヨロシ」
にべもなく断られる土方。

「「あーッ!!」」
「…どうした」
顔を真っ赤にしてくるりと振り向くと、2人揃って土方にしがみついた。

「沖田さんと銀さんが…」
「キスしちゃったネ…」
土方からしてみれば、2人ともいい年な訳だから当然だと思うが子供2人には刺激が強すぎたようだ。
「ショック受けるくらいなら初めからデートの尾行なんてしなきゃよかったろ」

自分にすがり付いてくる2人をあやしながらちらりと例のゴンドラを覗く。
中では未だ2人が抱き締め合っていた。
見ていると段々苛々してくる。

「…死ね沖田」
思わずボソリと呟くと沖田が此方に視線を寄越した。
「あいつ気付いて…!?」
ニヤニヤと不敵に笑ったまま口許が小さく動く。

し ね ひ じ か た


10/03/04
me。遅くなってごめん。
つーか、見事に沖銀にはならなかったよ。
だから言ったんだ。沖銀苦手だって…。

沖田は初めから尾行に気づいてます。
銀時は…どうなんでしょ?気づいてるのかもしれません。
最早、尾行じゃない 笑


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あきゅろす。
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